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2020/08/26 14:40


印象的なシーンや
心情
あるいは感覚が
針を持たせることがある

糸や布が
記憶を引き出すこともある

どちらにしても
私の内の奥の奥にある
ざわめき
あるいは煌めきが
描いてくれよと
囁く
あるいは
言葉がさきだつ

たとえば
こんなふうに


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「食べる生きる里」

食べる。
生きる。
人も、
草も、
樹も風も。



盛夏。私は縁側から外を見ていました。日は高く、窓を境にはっきりとした明暗。暗い縁側からみる景色は舞台のようでした。
庭の向こうにはビニールハウス、その向こうには小さな畑、その向こうには細い道があり、道に沿って大きな栗の樹や桑の樹が並んでいます。
さあっと風が吹いて、陽光に包まれた樹々に絡みました。水に揺れる海藻のように波打ち泡立って見えました。地中から吸い上げた水を葉っぱから振りまいて風に差し出すかのように。
トラクターや草刈機の音があちこちから聞こえる農の営みの気配。むせかえる草の匂い。
現実と神秘、自然と人為、見えるものと見えないもの。どっちもこっちもなくて、全てが精一杯にその存在を表して生きている。
私の肌は熱気と湿気を感じている。そんな瞬間の糸色景色です。


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「祝福」

祝福。
そうだ、今だ。
この光。



ティーマットサイズに切り揃えておいた布の中から、明るい黄色をした日本手拭のきれを選びました。柄は福寿草です。次に選んだのはもう少し濃い黄色の糸を2種類。古道具屋で出会った出所不明の糸。
少しほどいて布に載せてみると、光が降り注ぐ時間が現れました。楽しい嬉しい気持ちになって、明るい色の糸やハギレを黙々と布に合わせて行きました。
仕上げのチャームは、当初、カトリック教会ショップで出会ったマリア様のペンダントトップをつけたのですが、写真撮りの時には取れてなくなってしまっていたのです。あれ、マリア様、お隠れになったわ。受け入れて新たに選んだのは、インドの真鍮ビーズ。これでいい。
完成に向かいながら、言葉が生まれてきました。
それから1年ほど経ち、見知らぬお客さまがこの作品を見つけて注文をくださいました。その数日前に人生の大きな転機なのだろうと感じる出会いがあったばかり。
今、「祝福」の言葉を聞くに値する時なのだと腑に落ちた瞬間でした。



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